ビジネスエッセイ;中小企業に財務人材(=CFO)は必要か?-①

ビジネスエッセイ;中小企業に財務人材(=CFO)は必要か?-①

2023年11月2日 オフ 投稿者: Hill Andon

はじめに

中小企業の経営改善をお手伝いしていると「財務に関わる人材がなかなか見当たらない」と痛感します。

会社がうまくいっている時はよい(というか不具合が表面化しないだけ)のですが、ひとたび経営の歯車が狂いだすと「財務人材の不在」はボディブローのように効いてきます。
新規の資金調達や既存の借入の期間延長、さらには返済条件の緩和といった件を金融機関と交渉する際、これまでは揉み手をしながら「社長、いつでもお貸しします。借りてください!」と言っていた支店長が「今の貴社の業績では・・・。」と手のひらを返したような慎重な物言いに。
併せて「本部が確認してくれと言ってますので」を枕詞に飛んでくる様々な質問や資料の徴求への対応に、社長も経理担当も、顧問税理士までが右往左往。
情報開示が遅れたりピント外れだったりすることが続くと、「大丈夫か?この会社」と金融機関からの信用も次第に失われていきます。

こうした交渉や対応に必須なのが「金融リテラシー」「経営管理/企画」の発想を持った財務人材。

しかし、一般に中小企業(特に従業員数十名規模までの中小~零細企業)においてそうした財務人材を見かけることは極めて稀です。

多くの中小企業にとっては本業の運営に関わる人材を抱え、繋ぎとめるのが精いっぱいで、財務人材の確保まではとても手が回らない、というのが実情でしょう。それもごもっとも。

とはいえ財務人材は上述のような「有事」の際のみならず社業が順調な「平時」においても計画的持続的な成長を下支えしてくれる文字通りの縁の下の力持ちとして機能してくれます。
考えようによっては現業の従業員数人分のパフォーマンスに匹敵すると言っても良いかもしれません。

「ホンマかいな?ウチにも経理担当者はおるで。税理士の先生ではアカンのかいな?」

本稿ではそんな疑問にお答えし、中小企業における財務人材の機能や必要性について解説していきます。

よろしくお付き合いください。

そもそも「財務」とは?~中小企業にとって財務は必須業務?~

「そもそも財務ってなんやねん?経理とどう違うねん?」

筆者も若い頃はそう思っていました。そして先輩に聞いてもわかったようなわからないような回答・・・。

いろいろ調べていくうちに行き当たったフレーズが「経理は過去。財務は未来」というもの。
最初のうちは「?」でしたが、だんだんハラ落ちしてきました。

経理は会社が使ったお金を管理する業務であるのに対し、財務の対象はこれから会社が使うお金。

経理の業務には日々の現預金の管理に始まり伝票記帳や管理/集計、試算表や決算書などの資料の作成などが挙げられます。
確かに会社で「過去」に動いたヒト・モノ・カネの流れを「会計」というルールに基づいて記録する業務=経理、ということもできそうですね。「経理は過去」ナルホド。

一方、財務の業務の代表として挙げられるのが資金調達。会社が将来使うおカネを金融機関や資本市場から引っ張ってくること。そのための様々な交渉も含まれます。
更には調達してきたおカネをどう使うか?計画を立てて優先順位をつけて振り分けて、それらが実際にちゃんと使われているか管理して・・・。
もっとベタな言い方をすれば「今あるカネでうちの会社はいつまで生き延びられるか?」(資金繰り)みたいな業務も財務と言っていいと考えます。
確かに「財務は未来」かもしれませんね。

中小企業では財務と経理の業務が特に区別されず、「経理部」などの部門で漫然と運営されていることも珍しくありません。

ただ、会社は(好むと好まざるにかかわらず)税金を納めるために決算書を作る必要があるので、中小/零細企業でも経理業務は必須のものと言えます。

一方で中小企業の「会社の未来」は社長のアタマの中にあることが多く、その未来像をプレゼンして銀行からおカネを借りる交渉も社長の専管業務になっているケースが多いです。
そして借りてきたおカネの使われ方を管理する業務は・・・?実際には誰も管理していない場合も。
つまり、中小企業において財務業務が明確な役割分担のもとに運営されているというのは比較的レアケースなのでは?というのが筆者の見立てです。

では、中小企業には財務業務を担う人材は必要ないのか?財務は社長にまかしときゃいいじゃん。でいいのか?

このあたりは難しいところですね。

それぞれの会社の、それぞれの社長の考え方に依る部分が大きいと思います。

これまでの経験や見聞を踏まえると、筆者は「中小企業の財務業務には『社長プラスワン』(社長以外にあと一人)が必要」と考えます。

中小企業では社長がその会社の主たるビジネスを遂行するリーダーであるケースが多いです。
つまり社長は、経営上の最高責任者(CEO)であるとともに業務遂行上の責任者(COO)を兼ねていることが多いということです。

その一方で、CEO兼COOの社長がおカネに詳しいか?というと必ずしもそうとは限らない、というのが筆者の経験則。

たいていの社長さんは自分の会社については明確ではないにせよ何らかの形で未来像をもっています。ただその未来像を実現するための資金調達交渉を相手の金融機関が飲み込みやすい形で、つまり金融や会計という「共通言語」で語るスキル(こういうのを「金融リテラシー」と言います)を持っているかというと・・・?
更には調達した資金を債権者(金融機関)が納得のいくレベルで管理し、必要に応じて報告するという業務については社長さんはまるで無頓着・・・?

ここにこそ先に述べた『社長プラスワン』の存在意義がある、と思うのです。

『社長プラスワン』=中小企業の財務人材=中小企業のCFO です。

(次回に続く)

当社(株式会社KJソリューションズ)では中小企業の皆様を対象に財務(=CFO)業務を受託しております。ご興味のある方は以下のフォームよりお問い合わせください。