公募要領公表~事業再構築補助金~②

公募要領公表~事業再構築補助金~②

2021年3月28日 オフ 投稿者: Hill Andon

【補助金概要】


前回に続き、事業再構築補助金の公募要領の概要を改めてご紹介します。

前回はこちら

いわゆる中小企業(中小企業基本法に定義される中小企業。「ウチは中小企業だろう」と思っていらっしゃる会社はたいてい大丈夫ですが、念のためご確認ください)向けの「通常枠」は、直近6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高がコロナ前の同期間の売上高と比較して10%以上減少している先、が対象となり、補助額が100万円~60百万円。補助率は2/3です。
一方、「緊急事態宣言特別枠」は、コロナ禍でより深刻な打撃を受けた事業者を想定しており、令和3年1~3月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少よりしている先が対象で、より高い補助率(3/4)で、15百万円までの補助金が出ます。
(従業員数によって上限金額が異なるので注意。詳しくは「公募要領」をご参照ください)
仮に、特別枠で申請して不採択となった場合でも通常枠で再審査され、「加点措置」つまり下駄を履かせてもらって採択される可能性が高いようです。申請要件に当てはまり、投資総額が小さめの事業者は、まずは特別枠で申請するのが良さそうです。

また、二つの枠に共通する要件として、
①事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること(事業再構築要件)
②事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。補助金額が 30百万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば金融機関のみ)と策定していること(認定支援機関要件)
③補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること(付加価値額要件)
があります。

【事業再構築要件について】


「事業再構築要件」は、本補助金特有の要件です。
本補助金で言う「事業再構築」とは新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換・事業再編いずれかの類型に分類され、補助金を受けるにはいずれかの要件を満たすことが求められます。
類型の詳細については、別途公表されている「事業再構築指針」に記載されています。
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin.pdf

率直に言って、この「要件」を満たす事業計画を策定するのは結構ハードルが高いです。
「事業再構築指針の手引き」においても様々な想定ケースが挙げられていますが、なにぶん前例のない要件であるため、個別の事例がどう取り扱われるか?については、予断が許されません。
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin_tebiki.pdf

この辺りについては、別稿に詳しいので、そちらも併せてご覧ください。
https://www.facebook.com/KJSOL2017/posts/1671072529763089

【認定支援機関要件について】


認定支援とは、正確には「認定経営革新等支援機関」と言い、全国で3万以上の金融機関や税理士、中小企業診断士等が認定を受けています。
昨今の補助金では、申請にあたり認定支援機関が果たす役割がやや弱まってきている傾向があった印象ですが、本補助金では「認定支援機関と事業計画を策定する」とバッチリ明記されています。
また、補助金額が30百万円以上の場合は金融機関が関与することを求められています。
実務的には多くの金融機関が認定支援機関を兼ねているため、また、補助金が交付されるまでのつなぎ融資を受ける必要もあるため、金融機関の関与は必須と言って良いでしょう。
本補助金でいう「認定支援機関と事業計画を策定する」とは具体的には、「認定経営革新等支援機関による確認書」「金融機関による確認書」を取得することになるようです。このあたりはいわゆる「ものづくり補助金」の申請の際の手続きに準じているようです。
認定支援機関とはいっても、本補助金の計画策定に十分な関与ができるだけの時間やノウハウを必ずしも有しているとは言えず、計画作りを丸投げしても、期待に応えてくれるかどうかは分かりません。
「確認書」を得るにあたっては、補助金申請業務の実務に長けた専門家の支援を受けて事業者が計画書を自力で策定する覚悟が必要と考えます。

【付加価値額要件について】


本補助金いう付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいい、補助事業終了年度の付加価値額を基準とし、 3~5 年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定することが求められています。
このあたりも「ものづくり補助金」に準じたものと考えられ、同補助金の申請実務の経験のある専門家のサポートがあると心強いでしょう。

【共同申請】


その他に注目すべき申請形態として、公募要領には「代表となる事業者が、複数の事業者の取り組みを束ねて、一つの事業計画として申請を行うこともできます」と書かれています。いわゆる共同申請が可能ということでしょう。
ただし、補助上限額は一法人で申請した場合と同一であり、すべての事業者が応募要件を満たしている必要がある。とのこと。
例えば、地方の「ペンション村」のような地域で、複数のペンションが合同で「ワーケーション宿泊対応」の事業計画を策定し、地域活性化の切り口と併せて本補助金を申請する。といったストーリーはアリかもしれません。

【事業計画書】


補助金申請書の中核となる事業計画書については、公募要領では要約すると以下のような趣旨で言及されています。

「具体的内容については、審査項目を熟読の上、申請する事業再構築の類型について事業再構築指針との関連性を説明した上で、1~4の項目につき、A4サイズで計15ページ以内での作成し、pdfファイルで添付する」
「記載の分量で採否を判断するものではありません」

1:補助事業の具体的取組内容
2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
3:本事業で取得する主な資産(単価50万円以上の建物、機械装置・システム等)
4:収益計画(付加価値額要件を満たしたもの)

各項目とも「ものづくり補助金」に準じたレベルが想定されていると考えます。

【審査項目】


前項で触れられている「審査項目」については、以下のようなものです。
(詳しくは公募要領ご参照ください)

(1)補助対象事業としての適格性
 補助対象事業の要件を満たすか?

(2)事業化点
① 事業実施体制(人材、事務処理能力等)や財務状況等から、補助事業を遂行できると期待できるか?金融機関等から十分な資金の調達が見込めるか?
② 競合他社の動向や市場ニーズや規模を把握/検証できているか?
③ 補助事業を通して供される製品やサービスが価格的・性能的に優位性や収益性を有し、事業化に至る遂行方法やスケジュールが妥当か?課題が明確になっており解決方法が明確かつ妥当か?
④ 費用対効果が高いか?自社の強みの活用や既存事業とのシナジー等により、効果的な取組となっているか?

(3)再構築点
① 事業再構築指針に沿った取組みであるか?全く異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか?
② 既存事業における売上の減少が著しいなど、新型コロナウイルスの影響で深刻な被害が生じており、事業再構築を行う必要性が高いか?
③ 市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの最適化を図る取組であるか?
④ 先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域のイノベーションに貢献し得る事業か?

(4)政策点
① 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用等を通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか?
② 新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えて V 字回復を達成するために有効な投資内容となっているか?
③ ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか?
④ 地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより雇用の創出や地域の経済成長を牽引する事業となることが期待できるか?
⑤ 異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか?また、異なる強みを持つ複数の企業等が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか?

(1)(2)に関しては、従来の補助金申請のノウハウをそのまま援用しやすい項目ですが、(3)(4)については、申請者の力量が問われる部分でしょう(特に(3))。

【添付書類】


電子申請の際に添付する書類は以下の通りです。

① 事業計画書
② 認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書
③ コロナ以前に比べて売上高が減少したことを示す書類
④ 決算書(直近2年間の貸借対照表・損益計算書・製造原価報告書・販売管理費明細・個別注記表)
⑤ ミラサポplus「活動レポート(ローカルベンチマーク)」の事業財務情報
⑥ 海外事業の準備状況を示す書類(通常枠・緊急事態宣言特別枠は不要)
⑦ 従業員数を示す書類(緊急事態宣言特別枠のみ)
⑧令和3年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等による影響を受けたことにより、2021 年 1 月~3 月のいずれかの月の売上高が対前年(又は対前々年)同月比で 30%以上減少していることを証明する書類(緊急事態宣言特別枠のみ)
⑨ 2021 年 1 月~3 月のいずれかの月の固定費(家賃+人件費+光熱費等の固定契約料)が同期間に受給した協力金の額を上回ることを証明する書類(緊急事態宣言特別枠のみ)

上記の③売上高減少に係る証明については、具体的には以下の書類が必要です。
①申請に用いる任意の3か月の比較対象となるコロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の売上が分かる年度の確定申告書別表一の控え(1枚)
②①の確定申告書と同年度の法人事業概況説明書の控え(両面)
③受信通知(1枚)(e-Taxで申告している場合のみ)
④申請に用いる任意の3か月(2020年又は2021年)の売上がわかる確定申告書別表一の控え(1枚)
⑤④の確定申告書と同年度の法人事業概況説明書の控え(両面)

【問い合わせ先】


<事業再構築補助金事務局コールセンター>
受 付 時 間:9:00~18:00(土日祝日を除く)
電 話 番 号:<ナビダイヤル>0570-012-088
<IP電話用> 03-4216-4080

【おわりに】


率直に言って、かなり難易度の高い補助金だと感じています。
申請する側も初めて、審査する側も初めて。
そんな中、限られたスケジュールで「ここまで作り込んだら採択されるはず」「これで落ちたらやむを得ない」といったところまで納得できる申請実務がこなせるのか?
事業構想が既に固まっていて、今すぐにでも事業を開始しなければならない事情があるなどの場合は別ですが、そうでないならば拙速な動きは一旦控えて、第2回以降の募集をターゲットに準備を進める方が得策と考えます。

(この稿おわり)