書評:小さな会社のSDGs実践の教科書~1冊で基礎からアクション、マネジメントまでわかる~

書評:小さな会社のSDGs実践の教科書~1冊で基礎からアクション、マネジメントまでわかる~

2021年12月19日 オフ 投稿者: Hill Andon

著者:青柳 仁士
出版社 : 翔泳社
発売日 : 2021年2月3日
単行本 : 207ページ

☆☆ ご興味のある方はどうぞ

以前、ある中小企業で「SDGsプロジェクト」の企画/運営をお手伝いさせていただきました。
社員の方々にレクチャーし、ワークショップを行ない、アクションプランを立て、その実践をフォローしていきました。
プロジェクトは一定の成果を出すことはできましたが、今にして思えば「もう少しうまくやれたかも・・・」と反省すべき点がいくつか残りました。
「あのときこの本があれば・・・」本書のページをめくりながら、つくづくそう思いました。

SDGsは、国連で合意された「2030年までに地球と人類が目指すべき17の目標」です。貧困や飢餓、健康、教育、環境保全、公正平等安全な社会、そして経済発展などが謳われています。
昨今では英国で開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)における石炭火力の「廃止か削減か」を巡る議論に関連付けてSDGsが改めてクローズアップされました。
多くの上場企業は「ESG投資」を標榜する機関投資家の意向により好むと好まざるにかかわらずSDGsへの関与が求められ、実践もなされていますが、残念ながら中小企業においてはようやくSDGsの存在が認知され始めた、というレベル。
SDGsを自社の経営理念やビジョンに取り入れ、それに基づいた戦略を立てて実践している中小企業、となるとまだまだ少数派です。

本書はそうした中小企業のSDGsへの取組をサポートしてくれる1冊です。
そもそもSDGsって何?中小企業にとっての意味合いは?に始まり、SDGsをどうやって自社の経営に取り込むか?定着させるか?ビジネスとして成り立たせるには?といったテーマについて要領良くまとめられています。

  • SDGsは経済価値のみならず「社会価値」においても企業の競争が行われる仕組を作ろうというトレンド
  • あなたの会社と社会、双方にとっての「コスト」を削減する
  • 企業活動を通じて、会社と社会、双方にとっての「価値」を創造する
  • 社会が抱えているジョブ(=対価を支払うほどに切実で、ビジネスとして成立するほどに多くの人や組織が片付けたい仕事や用事)を自社のビジネスに結びつけられれば、SDGsビジネスは成立する
  • SDGsへの取組についての社会的な評価尺度/基準にはどんなものがある?

といった内容について中小企業の目線から解説されています。

中小企業にとってはSDGsを「何故やらねばならないか?」「やって儲かるのか?」といった疑問を晴らし、取り組むモチベーションを持つことがまず大変です。
上場企業にとっては「SDGsに真面目に取組まない企業の株は買いません。持ってる株は売ります」と年金基金などの機関投資家が言い始めているので、そういう「外圧」に押されてSDGsに踏み出すのですが、中小企業の周辺にはそうした構造が存在しないからです。

本書を通してそうした疑問を晴らし、モチベーションを得るヒントをつかむことができます。

惜しむらくは書きっぷりがやや高踏的でハイブロウなため、ベタな中小企業のおっちゃんたちとの共通言語で書かれておらず、「ホンで具体的にはどうしたらエエねん?」となりそうな懸念も。
著者の方にそうした場面での指導経験がなかったのかもしれません。あくまで推測ですが。

とは言え中小企業がSDGsを考えるなら、何はともあれ本書は必携でしょう。

(この稿おわり)

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