コーチングの効果・効用と限界~キーワードは「コーチャブル」~

コーチングの効果・効用と限界~キーワードは「コーチャブル」~

2021年6月12日 オフ 投稿者: Hill Andon

クライアントのパフォーマンス向上を促すコミュニケーションスキル、コーチング。
ビジネスだけでなく様々な生活の局面であなたを支えてくれるコーチングですが「本当に効果あるの?」という声も耳にします。
本稿ではコーチングの効果・効用と限界について取り上げてみます。

コーチングに期待すること

一般にクライアントの方々がコーチングに期待することはどんなことでしょう?
ランダムに挙げてみます。

  • 自分の/自社の強みを見つけたい
  • コミュニケーションを円滑にしたい(上司・同僚・部下)
  • リーダーとして成長したい
  • 自分の/部門の成績を上げたい
  • 次なるビジョンを見出したい
  • ビジネス上の課題を克服したい
  • 経営戦略を明確化したい
  • 経営戦略をキチンと実行したい
  • 起業して成功したい

ビジネス絡みとしてはこんなところでしょうか。

コーチングの効果・効用

こうしたテーマについて「コーチングを通じて解決できた!」というケースが確かにあります。

コーチの質問に導かれて「良いイメージ」「成功イメージ」「ありたい姿」を具体的に思い描き、それによってモチベーションが上がり、行動へと結びついていく。
問題意識や懸念、構想を言葉にして説明しようとすることでアタマの中が整理され、イメージが明確化されたり、思い込みに気付いたり、違う発想が湧いたり。それによってアクションプランが明確化されたり、洗練されたり。

これらはコーチングの効果・効用と言って良いでしょう。

ここまではアタマ(理性)のハナシ。
一方、ココロ(感情)の面ではどうでしょう?

人間には程度の差こそあれ多かれ少なかれ「自己実現したい」という欲求があります。
「自己実現」欲求の現れ方の一つとして「自分でやりたい」「人に強要されたくない」という思いがあります。
裏返せば「他人に指図されず、自分が考えたやり方でコトを運べれば」モチベーションが湧く。ということです。

かたや人間は弱い生き物。
自分で立てた誓いも計画も、ついつい易きに流れて継続できなくなる。達成できなくても「ま、いいか・・・」と。
そんなとき傍にいて「どうですか?きっとできますよ!」と背中を押してもらうと頑張れちゃう。頑張らざるを得ない。
という悲しい?性(さが)があるのも事実。

コーチングはこうした人間心理や行動特性に適切に働きかけてパフォーマンス向上につなげていきます。
適切な質問スキルと傾聴、励ましの言葉とリクエストで、コーチはクライアントが自ら意識を覚醒し、コミットし、行動を起こし、継続することを助けるのです。
つまり、人間の特性に基づいてモチベーションと行動を好循環で回転させていくことがコーチングの効用と言えるでしょう。

コーチングの限界と「コーチャブル」

ところが「(コーチングを受けたけど)効果なかったよ・・・」という声も時としてあります。
なぜでしょう?

前述の好循環が上手く回らなかった場合?
例えば、上司から(会社から)命じられてコーチングを嫌々受けている。半信半疑で受けている。なんてシチュエーションでしょうか。
いまひとつコーチを信頼することができず、コーチングのプロセスに身を委ねられない。質問や激励の言葉の意図を深読みしすぎて自分の言動に本心からコミットできない。そんな心理状況でしょうか?

コーチングが効果を示すか否か?その分岐点がこの辺りにあるように思います。
いわゆるcoachable(コーチャブル)かどうか?
一兆ドルコーチ」にはこのように書かれています。
「伝説のコーチ」ビル・キャンベルは「コーチングを受け入れられる「コーチャブル」な人だけをコーチングした」と。

このあたりが、コーチングの限界かと思います。
コーチャブルでない人には機能しない。しても限定的ということ。
確かに腕の良いコーチであれば、コーチングプロセスを通じてクライアントをコーチャブルに変えていくこともできるでしょう。
しかし、根本的にはクライアントその人がコーチャブルであるかどうか?にかかっています。

コーチャブルとはどんな状態?

では「コーチャブル」とはどんな状態?
ビル・キャンベルが求めたコーチャブルな資質とは、「正直さ」「謙虚さ」「あきらめず努力を厭わない姿勢」「つねに学ぼうとする意欲」であると同書には書かれています。

「自分が変えたい」「自分を変えたい」という思いをもって、テーマについてコーチと真摯に向き合えること。
コーチングを求めつつもコーチングに依存し過ぎず、主体的/自発的に前進しようとする姿勢。
筆者の言葉に直すと「コーチャブル」とはそういうものだと思います。

確かにそれ以外の要素もないではありません。
例えばコーチとクライアントの「相性」。
双方の相性が良ければ信頼関係の構築が容易になり、コーチングが一層効果的になったり、コーチャブルでなかった人がコーチャブルになったりするでしょう。その逆のパターンもあり得ます。
また、「コーチングは「重要ではあるが急がない」課題の解決に有効。反面「重要かつ急ぐ」課題の解決には不向き」との指摘もあり、確かにその通りだとも思います。
それらもコーチングの効用や限界を示す一面でしょう。

しかし、より根源的な要素としては「コーチャブルかどうか」。
筆者はそう考えます。

コーチングの場では「答えはクライアントの中にある」とよく言われます。
コーチングの成否も「分岐点はクライアントの中にある」のかもしれません。

(この稿おわり)
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