徹底精読! 事業再構築補助金公募要領 ~第1回公募要領と第3回(最新版)を徹底比較~

2021年8月17日 オフ 投稿者: Hill Andon

2021年3月より公募の始まった大型補助金、事業再構築補助金は現在(2021年8月)3回目の公募(公募期間;2021年7月30日~9月21日)が行われています。
第1回公募要領が公開されて以降、公募要領は何度も改訂されています。
その改訂履歴は、以下のURLから確認することができます。
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/faq_sonota_kaitei_rireki.pdf
改訂内容の多くは、記載内容について「正確性を期すこと等から一部の表現を修正」というものが多いですが、「売上高減少要件の見直し」といった要件の見直しも行われています。

そして今回、第3回公募においては「最低賃金枠」や「大規模賃金引上枠」が新たに設けられるなど、第1回公募時と比較すると制度自体も随分変容しています。
本稿では、第1回公募要領と第3回公募要領を比較することで事業再構築補助金制度の現状をアップデートして浮き彫りにしたいと思います。

なお、記載内容は申請者が「中小企業」であることを想定しているため、全ての事項を網羅しているわけではないことを予めご承知おきください。
また、変更点の比較は第1回公募要領(ver1.1)と第3回公募要領(ver1.1)によるものであるため、第2回公募などその間の変更も「変更点」に含まれていることをご承知ください。

主な変更点

中小企業庁の事業再構築補助金ウェブサイトでは「第3回公募からの主な変更点」が公開されています。
それによると、

  • 「最低賃金枠」が創設され、「業況が厳しく、最低賃金近傍で雇用している従業員が一定割合以上の事業者について、補助率を3/4に引上げ(通常枠は2/3)、他の枠に比べて採択率を優遇する。」
  • 通常枠の補助金上限額の見直しとして、「最低賃金の引上げの負担が大きい従業員数の多い事業者に配慮するため、従業員数が51人以上の場合は、補助上限を最大8,000万円まで引上げる(従前は最大6,000万円)。さらに、従業員数が101人以上の場合には、補助上限を最大1億円とする(「大規模賃金引上枠」の創設)
  • その他の運用の見直しとして①売上高10%減少要件の対象期間を2020年10月以降から2020年4月以降に拡大する②売上高10%減少要件は、付加価値額の減少でも要件を満たすこととする。③新たに取り組む事業の「新規性」の判定において、「過去に製造等した実績がない」を「コロナ前に製造等した実績がない」に改める。


が挙げられています。
これらを踏まえて、以下に解説していきます。

通常枠の見直し

第1回公募要領(以下、第1回と表記)では定められていなかった従業員数に連動した補助金の上限額が設定されました。これまでは60百万円が上限でしたが、51名以上の企業は80百万円が上限となります。
ただし、60百万円までは補助率2/3、それ以上の補助率は1/2が適用されます。
(公募要領の主な記載ページ:P.2 P.9)

緊急事態宣言特別枠の要件見直し

【宣言による売上高等減少要件】:(ア)又は(イ)のいずれかの要件を満たすこと
(ア):令和 3 年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等による影響を受けたことにより、令和3年 1 月~8 月のいずれかの月の売上高が対前年又は前々年の同月比で30%以上減少していること(第1回では令和3年 1 月~3月だったものが長くなっている)
(イ):(ア)を満たさない場合には、令和 3 年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等による影響を受けたことにより、令和3年 1 月~8 月のいずれかの月の付加価値額が対前年又は前々年の同月比で 45%以上減少していること(新設)
(主な記載ページ:P.13)

大規模賃金引上枠の創設

  • 概要:従業員101人以上。多くの従業員を雇用しながら、継続的な賃金引上げに取り組むとともに、従業員を増やして生産性を向上させる中小企業等の事業再構築を支援。(すべての公募回の合計で150 社限定)
  • 補助金額:80~100百万円
  • 補助率:中小企業者等 2/3(6,000 万円超は 1/2)
  • 補助事業実施期間・補助対象経費:通常枠に同じ。
  • 要件:
    • 補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から 3~5 年の事業計画期間終了までの間、事業場内最低賃金を年額 45 円以上の水準で引き上げること【賃金引上要件】
    • 補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から3~5 年の事業計画期間終了までの間、従業員数を年率平均 1.5%以上(初年度は 1.0%以上)増員させること【従業員増員要件】
    • その他は、通常枠の要件に同じ
  • 特筆すべき添付書類:賃金引上げ計画の表明書・従業員数を示す書類

*不採択の場合は通常枠で再審査されます。
*賃金引上要件・従業員増員要件については未達成等の場合に補助金の返還義務が生じるので注意が必要です。
(主な記載ページ:P.2 P.10 P.12 P.17 P.32)

最低賃金枠の創設

  • 概要:最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等が取り組む事業再構築に対する支援。
  • 補助金額:緊急事態特別宣言枠に同じ(従業員数に連動して最大15百万円)
  • 補助率;中小企業等3/4
  • 補助事業実施期間・補助対象経費:通常枠に同じ。
  • 加点措置を行い、緊急事態宣言特別枠に比べて採択率において優遇。
  • 要件:
    • 【最賃売上高等減少要件】(ア)又は(イ)のいずれかの要件を満たすこと
      • (ア)2020 年 4 月以降のいずれかの月の売上高が対前年又は前々年の同月比で 30%以上減少していること
      • (イ)(ア)を満たさない場合には、2020 年 4 月以降のいずれかの月の付加価値額が対前年又は前々年の同月比で 45%以上減少していること
    • 【最低賃金要件】2020 年 10 月から 2021 年 6 月までの間で、3 か月以上最低賃金+30 円以内で雇用している従業員が全従業員数の 10%以上いること(賃金台帳要提出)
    • その他は緊急事態宣言特別枠の要件に同じ
  • 特筆すべき添付書類:事業場内最低賃金を示す書類・従業員数を示す書類

*不採択の場合は通常枠で再審査されます。
(主な記載ページ:P.2 P.3 P.11 P.14 P.18 P.32 P.35)

売上高10%減少要件の対象期間の変更

第1回では「申請前の直近の連続する6ヶ月間・・・・」とありましたが、「 2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少しており、2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して5%以上減少していること等。」とされました。
また「売上高に代えて付加価値額を用いることも可能です。」との注記もあります。
(主な記載ページ:P.3 P.15)

その他の変更

  • 補助対象事業者:コロナ以前(2020年3月31日以前)から創業を計画等しており、2020年4月1日から2020年12月31日までに創業した場合は、特例的に支援の対象となる。
  • 形式的な不備により申請要件を満たさなかった場合、事務局から通知があり再申請が可能。
  • 添付書類の事業計画書は、最大15ページ。補助金額15百万円以下の場合は10ページ以内。

(主な記載ページ:P.7 P.22 P.31)

前述の「主な変更点」で触れた
③新たに取り組む事業の「新規性」の判定において、「過去に製造等した実績がない」を「コロナ前に製造等した実績がない」に改める。
に関しては、実は公募要領には明確な言及がありません。
一方、別途公開されている「事業再構築指針の手引き」には2021年7月30日付の変更として
「「新規性」とは、事業再構築に取り組む中小企業等自身にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません。2020年4月以降に新たに取り組んでいる事業について、「新規性」を有するものとみなします。」
とあります。
ニュアンスは異なりますが、同じ趣旨であると思われます。

以上が、第3回公募要領の主な変更点です。
公募要領を読み解くのは正直なところ非常に面倒なことですが、本稿が多少なりともその負担軽減のお役に立てれば幸いです。

(本稿終わり)

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