補助金あるある ~補助金にまつわる思い込みや過度な期待~-後編

補助金あるある ~補助金にまつわる思い込みや過度な期待~-後編

2021年9月5日 オフ 投稿者: 鈴木健二郎

補助金に対する思い込みや勘違いから生じる様々な悲喜劇?
前回に続き「補助金マスター」、中小企業診断士の鈴木健二郎さんの「補助金あるある」をお届けします。

(前編はこちらから)

補助金は「返さなくてもいいお金」という勘違い

実は補助金には、採択された事業で収益が出るとその一部を国に返還しなければならないルールがあります。
そこそこの収益が出なければ返済をしなくていい計算式ではあるのですが、儲け過ぎたら一部を返さなくてはいけません。
具体的な計算方法等はそれぞれの制度の採択後の手引きを確認して下さい。
一説では、法律でそう決まっているから返還が求められているだけで、実際に役所の人達は「返されても困る」というスタンスだとか・・・。
噂ではものづくり補助金の1000万円(補助金上限金額)を1年目で全額返した企業もあるそうです。

補助金は苦しんでいる中小企業を救うものではない

これは現場で頻繁に遭遇するケースです。
ほとんどの補助金は苦しい企業を救うためのものでなく、国の方向性に沿った事業活動を行う事業者に出る、という性質のものです。
具体的には、赤字や債務超過の企業は補助金を申請しても計画が採択され難い傾向があります。
それは、国民が支払った税金が企業の責任である赤字の補填に使われるのを防ぐためでもあります。
加えて体力のない企業はいくらイメージを膨らませて事業計画をつくっても、それを実行できない可能性があり、審査側はそれも細かく判断しています。
現場では上記の説明をすると怒りだす社長もいます。
創業から赤字続きのとあるベンチャーの社長が「自社の研究に国は金を出すべきだ!」と怒りだしたり、債務超過の会社の社長が「知り合いで同業の社長が通ってたからうちも通る!」と怒りだしたり。
これを言うと元も子もないのですが、まずは自社の事業で収益を出し、健全な経営を続けて、その余力で補助金が無くとも成り立つ事業計画を描き実行すべきです。

「怪情報」に振り回される

補助金申請の界隈には、「新たな補助金は第1回が採択されやすい」「この補助金は採択率が高い」「この制度は政治家の〇〇さんに声をかければ必ず通る」「あの専門家は採択率100%らしい」などフワフワした怪しい情報がつきものです。
世の常ですが、都合の良い(採択された)情報だけが広く共有され目立つようにできており、その裏では人知れず都合の悪い(不採択の)情報がひしめいているのです。
制度の設計をしたり、審査をしている側の人々は、補助金に多額の税金が使われている事を自覚しており、不公平な結果を出してトラブルになるような事をするというのは考えにくい事です。
そもそも国が勝手に決めた制度なので、あまり期待し過ぎず本業に集中し、ついでという感覚で取り組みましょう。

専門家に期待し過ぎる

補助金に限った事ではありませんが、専門家、コンサルタントなどと仕事をする時、社長が「お手並み拝見」のスタンスで物事に取り組むと結果が出ない事が多いです。
補助金をコンスタントに獲得ている会社の社長は、申請書の一文字一文字を読み込み、自ら情報を取り、計画の大幅な手直しも厭わない印象があります。
社長自らが計画策定に係わらない場合でも、担当者レベルで制度の理解をし時間をかけて綿密に取り組んでいます。
一方時間とお金が無駄になるのは「お金を払っているからあとはヨロシク」というパターンです。
計画に熱が帯びないので具体性に欠け、審査員に計画の実現可能性を見透かされてしまいます。
また、お金を支払っているのに専門家が計画作りを前向きに手伝ってくれない、という悩みも時々聞きますが、専門家は成功報酬を得てやっと黒字である場合が多く、計画自体が無理矢理な場合などは、前向きに手伝わない専門家も少なくないようです。
多くの補助金は「採択されない可能性の方が高い」ので、依頼を断る専門家はむしろ良心的なはずなのですが、どうしても取り組みたい方には歯がゆいのかも知れません。
補助金申請を誰かに手伝ってもらう時は、費用は勿論、どのような事を手伝ってもらえるか、後のサポートをどこまでしてくれるかなどすり合わせ、計画に対する率直な意見も聞くようにしましょう。

(この稿おわり)