生かせ高度人材:優秀な留学生を中小企業に呼び込む(最終回)

生かせ高度人材:優秀な留学生を中小企業に呼び込む(最終回)

2021年10月8日 オフ 投稿者: 異文化コーディネートプロアライアンス 中村拓海&中本寧

(1回目はこちら)
(2回目はこちら)
(3回目はこちら)
(4回目はこちら)

皆さんこんにちは!

連載も今回で最終回となりました。
これまでは幹部候補生としての大学・大学院に通う留学生の採用についてお話ししてきましたが、今回は企業からの関心が高い“技能実習生”と“特定技能”の制度をご紹介したいと思います。
いずれも現場での人手不足を解消するための方法と考えられている事も多いかと思いますが、制度を利用するに当たってそれぞれの制度概要と注意点について考えてみたいと思います。

<技能実習制度>

制度概要

この制度は開発途上国から人材を受け入れ、彼らが日本の技能・技術・知識を学び母国で役立ててもらう、つまり国際貢献が本来の目的です。
中国、フィリピン、ペルーなど日本と技能実習制度を取り決めた国から技能実習生を受け入れます。

多くは商工会や事業協同組合などの“監理団体”を経由して技能実習生を受け入れますが、送り出し国の現地法人や取引先の従業員を技能実習生として受け入れることもできます。

技能実習のステップと期間

来日当初は“技能実習1号”として日本での在留資格を取得しその後は技能の習熟度に応じて資格試験を受験し、それに合格すると2号、3号へと進み、最長5年間日本に在留することができます。
但し4年~5年目は優良と認められた監理団体及び受け入れ企業だけが延長できる事に注意しましょう。

技能実習制度の課題

技能実習生は現在約40万人が日本におり、幅広い企業で活躍している一方、安価な労働力として雇用されトラブルになっているケースが後を絶ちません。
“適正な実習を行っていない”、“最低賃金以下の報酬”、“残業代の未払い”などが受け入れ企業の7割以上で発生しています。
技能実習生の多くが母国で送り出し機関に多額の保証金を支払っていることが多く、その返済や劣悪な労働環境・条件に耐えられず実習先を逃げ出して不法滞在につながるケースが少なくありません。

 “給与を規定通り支払う”、“より良い労働環境を整備する”はもちろんですが、“日本語力の強化”に加え、“分かりやすいマニュアルの整備”、“一人一人に寄り添い困りごとに耳を傾ける”と言った体制作りが大事です。
技能実習生は留学生と異なり、企業に入るまでに十分な日本語力や日本の文化・習慣を身につけていないことから特に必要になります。

参考:公益財団法人 国際人材協力機構 外国人技能実習制度とは

<特定技能制度>

制度概要

“特定技能”制度は人材不足が解消されない産業で外国人を受け入れるために2019年に創設された在留資格の制度です。
対象となる産業は14分野、一定の専門性や技術を備えていれば就労が可能です。
技能実習生と異なり、原則として受け入れ企業が外国人を直接雇用します。

特定技能は先ず特定技能1号を取得しその後資格試験に合格すれば特定技能2号が取得できます。
1号では最長5年間の在留期間が得られます。2号に合格すると無期限で在留期間を更新することが可能になり、家族の帯同も可能になります。

しかしながら現在「特定技能2号」に移行できる産業は現状、建設業と造船・舶用工業に限られます。

特定技能で外国人を雇い入れる企業になるには雇用契約や雇用体制が適切であるといった条件が必要になります。
受け入れ後も支援計画を適切に実施するなどの義務があります。
怠った場合には、出入国在留監理局からの指導・改善命令などの対象となるほか、罰則規定が適用される恐れがあります。
自社ですべて対応することが難しい場合は、支援の実施を登録支援機関に委託することもできます。

参考:公益財団法人 国際人材協力機構 在留資格「特定技能」とは

<技能実習と特定技能の違いは>

細かい違いは下の表のとおりになりますが、誤解を恐れずに言えば、対象となる業種及び受入れ国の違いを別にすれば、メリットは特定技能の資格を取得していると言うことはN2以上の日本語力があると言うことになるかと思います。
しかしながらN2以上の資格を持っていても人によって日本語力には大きな差があり、即戦力となるかは別問題です。また採用に当たって自社が直接行うのではなく、外部の「登録支援機関」を通した場合技能実習生より初期費用が高額になりがちになります。
基本的に、特定技能外国人人材を紹介してもらう際、年収の20~30%が手数料の相場です。
基本的にその外国人人材の国籍や機関によっても費用はガラリと変わってきますが、外国人人材1人あたり50万円あたりが相場と言われています。

<それぞれの注意点>

仮に特定技能の外国人を自社で応募し採用するのでなければ技能実習生にしても特定技能の外国人でも間に入る“出身国の送り出し機関”、“監理団体”若しくは“登録機関”の善し悪し及びそれらとの関係性が大事になります。
しかしながら外国人採用がうまくいっている企業を見ると最初は採用と定着に苦労してでも一人でも良い人材を育てることができればその人が後から入る外国人社員のリーダー役になれていること、また一つのロールモデルとなって後から入る外国人社員がそれを見習うようになるといった良い循環が起きています。
成功事例から見ると、日本語と日本文化に精通した留学生を1~2名採用・育成し、彼らに技能実習生や特定技能の外国人社員を管理してもらう方法が良いでしょう。
そして、どのような属性の外国人を雇うにしても、“一人一人に寄り添い、困りごとに耳を傾けてより良い労働環境を整備する”事が何よりも大事だと思います。

(この稿おわり)