事業再構築補助金 ~事業計画書の記載事項とその注意点~

事業再構築補助金 ~事業計画書の記載事項とその注意点~

2021年5月3日 オフ 投稿者: Hill Andon

(2021年4月 第1回公募時点)

2021年3月より第1回の公募が始まった事業再構築補助金。その申請は電子申請システムを通して行ないます。
電子申請そのものについてもシステムの操作など実務的な勘所は少なからずあるのですが、本稿では電子申請書の添付資料であり、実質的に申請書類の中核といっても過言ではない「事業計画書」についてその記載事項と記載上の注意点についてまとめてみました。
なお、本稿は筆者自身が第1回公募の申請実務に関わった経験を踏まえたもので、あくまでも筆者の個人的見解を記したものであることを申し添えます。

公募要領をみると、事業計画書には次の4項目についてA4サイズ15ページ以内で作成するようにとあります。

  1.  補助事業の具体的取り組み内容
  2.  将来の展望(想定している市場および期待される効果)
  3.  本事業で取得する主な資産 
  4.  収益計画 


の4項目です。
本稿でもそれに沿って解説していきます。


1. 補助事業の具体的取り組み内容

申請者のプロフィールや本補助金を申請する必然性、対象となる事業の概要を書きます。


①現在の事業の状況~事業再構築の内容~

  1. 事業概要・沿革・主な実績など、自社のプロフィールを書きます
  2. 事業環境;外的環境と自社の状況との関係など。次項の「2.将来の展望」で詳しく書くので、ここでは簡単で良いと思います。「売上高減少要件」を満たすことについても簡単に触れておいて良いと思います。
  3. 現状の事業分析;SWOT分析などが一般的です。
  4. 事業再構築の必要性;1.~3.の記載を踏まえなぜ事業の再構築が必要か?を書きます。
  5. 事業再構築の具体的内容;具体的に何をやるか?設備投資等の概要は?実施体制(部署や担当者、社外協力者)・スケジュールなど。実際に何をやりたいか?熱意を込めて、かつ客観的に書きましょう。
  6. 導入する設備や製作する製品などの画像やビジネスフローの図など、ビジュアルを活用して訴求しやすい(訴求すべき)項目です。事業計画書のみならず、申請書類全体でここに一番ボリュームを割いても良いと思います。

②事業再編の形態

  1. 申請枠:緊急事態宣言特別枠/通常枠など、申請する「枠」について記載します。
  2. 事業再構築の類型:新分野展開型/業態転換型など申請する「類型」について記載します。
  3. 上記の申請枠や類型にはそれぞれ満たすべき各種の要件があります。それらに適合していることを具体的に記載します。本補助金の採択に向けては形式要件としてはここに適合するか否か?が最重要です。「事業再構築指針の手引き」を精読されることをお勧めします。

③新事業による競争力強化
新事業を行うことにより申請者が如何に競争力を強化し得るか、について記載します。
後に出てくる「4.収支計画」の数値の根拠となる部分です。

④既存事業の縮小
事業再構築にあたり、既存事業の縮小(解雇や閉鎖など)を行なうかどうか、について記載します。
解雇を行う場合は、再就職支援計画など「従業員への適切な配慮の取組」についての記載が必要です。ここは要注意。

2. 将来の展望(想定している市場および期待される効果)


①外的環境
前項の①-2.でも簡単に触れた内容ですが、ここで改めてしっかり書きます。
対象となる事業がターゲットとする市場の規模やその推移、構造、メインプレイヤー、直接の競合先、代替品の脅威などを記載します。
マーケティングの知識などが生かせる項目です。中小企業診断士さんとかが得意とするトコロですね。
グラフや図表が活躍する項目です。

②事業化ストーリー
外的環境を踏まえて対象となる事業がどのような優位性/独自性を持ち、収益を確保できるか?
一方で課題やリスクはどのように克服するか?
事業が成功した時の「ありたい姿(事業の姿・会社の姿)」をストーリーで示します。
「4.収支計画」の根拠となる部分です。説得力のある記載が必要です。

3. 本事業で取得する主な資産


対象となる事業で取得する単価500千円以上の資産を表で示す。
表のフォーマットは「電子申請入力項目」(後述)が参考になります。
公募要領には「資産の分類を書け」とあるのですが、どのように分類すれば良いか悩むところ。
「電子申請入力項目」には「日本標準商品分類・中分類」による「製品分類」が示されています。
https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/30
筆者はこちらを活用しました。
また、ここで記載した500千円以上の資産を取得する場合は、将来相見積が必要となります。早めの準備が必要です。

4. 収益計画

ここも形式要件を満たしているか?について記載する重要な項目です。

①収益計画
「付加価値要件」を満たすために「付加価値額」が年率3%以上増加する計画を表で記載します。
「付加価値額」は「ものづくり補助金」などでも用いられる指標で、一般的に言われる「付加価値」とは定義が異なります。ここでいう付加価値額は「営業利益+人件費+減価償却費」です。
電子申請システム上では、別途付加価値額を記載するページがありますが、筆者は同じ表をここでも記載した方がベターと考えています。

②「10%要件」または「売上高構成要件」が満たされることを示す表
「新分野展開」類型・「業態転換」類型で求められる「売上高10%要件」(=3-5年の事業計画終了後に新製品などが総売上高の10%以上となっている)または、「事業転換」類型・「業種転換」類型で求められる「売上高構成要件」(=3-5年の事業計画終了後に新事業や新業種が売上高構成比で最も高くなる)を満たしていることを示す表の記載が必要です。
既存事業の売上高、新事業の売上高、それらを合計した総売上高と構成比を時系列で示せばいいでしょう。
電子申請システム上にはこれを入力するページがないので、ここで記載しておくことをお勧めします。

③「補助事業」のスケジュール表
「補助事業」とは、今回の補助金を受ける対象となる設備投資や広告宣伝活動等のことです。
これら設備投資や広告宣伝の製作と実施を行なうスケジュール表(交付決定から12ヶ月以内に完了が必要)を記載します。
1.-①-5.「事業再構築の具体的内容」では、補助金の対象となる事業そのもののスケジュール表を記載しますが、ここでいう「補助事業」とは定義が異なりますので、別のスケジュール表となります。
例えば、新たな事業を始めるに際し、準備段階から収支が黒字化するまで3年かかるとして、そのうち、交付される補助金の使い道になる設備投資等を行う期間が3ヶ月だとすれば、この項では後者の3ヶ月についてのスケジュールを書きます。業者選定⇒設置工事⇒搬入⇒操作研修⇒試験運転⇒検収⇒本稼働 といったところでしょうか。
このあたりは、公募要領を精読ください。
また「事前着手」(公募開始以前の経費も補助金申請する)の場合もスケジュール表に記載しておく必要があります。

④資金調達計画
補助事業の資金調達計画(補助対象経費と補助金申請額)を表にします。
補助事業全体の資金調達計画(自己資金・金融機関借入・補助金・補助金が下りるまでの間のつなぎ資金等)も同じく表にします。
いずれも電子申請システム上で記載するページがありますが、同じ表をここでも記載した方がベターです。表のフォーマットは「電子申請入力項目」をご参照ください。

【全体を通しての注意事項】

  1. あくまでも筆者の私見ですが、 電子申請システム上に別途記載するページがあるからと言って、事業計画には記載しなくて良い、というワケではないと考えています。「これは重要事項だ」と判断される内容については敢えて重複して記載してもかまわないと思っています。採択を審査する審査委員がどのように(ウェブ上で?紙の資料で?)申請書類を読むかはわかりませんが、この事業計画だけは精査するはずです。ですので、事業計画書を見れば採択の可否を判断するために必要な事項が全てカバーされている方がベターだと考えるからです。
  2. なるべく表や図、グラフ、画像を多用した方がベター;公募要領にもその旨を示唆する記載があります。ビジュアルは大切です。
  3. 事業計画書作成にあたっての指定されたフォーマットはありませんが、事業再構築補助金のウェブサイトに参考資料として貼り付けてある「電子申請入力項目」を念頭に置くと良いでしょう。ただし、そのフォーマットはものづくり補助金の書式が流用されており、本補助金に完全にアジャストされているようには見えませんが。
  4. パワーポイントで作った方が加工も楽だし、見栄えも良いです。ただ、「電子申請入力項目」もWordの書式であり、「役所の文化」としてはWordでの作成がイメージされているように感じます。いずれにせよ提出はpdfファイルですが、どちらで作るかは微妙なトコロですね。筆者はWordで作成しました。
  5. 事業計画書は15ページ以内、という制限があります。たくさん書けば良いというワケでもないですが、ここまで触れてきた内容をそれなりにしっかり書き込むと10ページ以上にはなると思われます。ちなみに今回筆者が作成した事業計画書は12ページでした。
  6. 公募要領(とFAQ)・事業再構築指針・事業再構築指針の手引き(とFAQ)・事業再構築補助金の概要・電子申請マニュアルは、最新版(しばしば改訂されるので注意)をひと通り精読する必要があります。率直に言って非常に分かり難い(どこに何が書いてあるか?が特に分かり難い)ですが、これだけはしっかりやっておいた方が良いです。
  7. それでもわからなければ(しばしば起こります)、事業再構築補助金事務局(03-4216-4080)または、電子申請システムサポートセンター(050-8881-6942)に問い合わせましょう。電話が繋がり難いことも多いし、電話に出た人が頼りない対応のことも多いです。メールで質問してもなかなか返事が返ってこないことも多いですが、勝手に判断して間違うリスクよりはマシです。
  8. 添付資料は多岐にわたります(各種財務資料や認定支援機関確認書、労働者名簿など)。可能な限り前倒しで手配しましょう。特にミラサポPlusの事業財務情報はミラサポPlusへの登録が別途必要で、しかもはっきり言って入力が面倒です。添付書類をアップするだけでひと仕事、という覚悟が必要です。
  9. 「事前着手申請」が必要な場合は、別の申請書をダウンロード(公募要領参照)して忘れずに申請することが必要です。受付期間は交付決定日までなので、補助金申請後の手続きでも良いのですが、心配性の筆者は両方同時に申請しました。


参考になりましたでしょうか?
クオリティの高い、見た目も中身も充実した、採択されやすい申請書類の作成のお役に立てれば幸いです。
May the force be with you

(この稿終わり)

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