ビジネスエッセイ:事業再構築補助金を実際に申請してみました‐①

2021年5月5日 オフ 投稿者: Hill Andon

予算規模約1兆1,500億円という空前?の大型補助金として鳴り物入りで登場した事業再構築補助金
このたび、その第一回の公募に際し、実際に補助金申請を行なう機会を得ました。
今回はその申請実務に際して筆者が遭遇した事象や思ったこと、感じたことについて赤裸々?に記してみたいと思います。
あくまでも筆者の1回限りの経験に基づく私見であり、取り扱った事象については構造的/恒常的な問題もあれば、偶発的/一時的/個別的なケースもあります。
が、「補助金申請の実務ではこんな事が起こるのか」と知っていただくことで、今後中小企業のみなさんがこの補助金を申請される際の何かの助けになれるのでは、と考えています。
ご参考となれば幸いです。

スケジュール


経済産業省から事業再構築補助金の概要が明らかにされたのは2021年の2月の半ば。
3月になったら公募開始とのアナウンスでしたが、実際に公募が始まったのは3月26日でした。
ところが、公募開始といっても申請するための電子システムはオープンしておらず、それが稼働して実際の申請ができるようになったのは、4月15日でした。
公募要領には、公募開始が3月26日。申請受付4月15日。応募締切4月30日。とあります。
いったい、公募開始と受付開始の区別は何なのでしょうか?
締切が4月30日ということは、申請の受付期間は2週間。
タイトなスケジュールやなぁ・・・。
短期間にシステム申請が集中して、サーバーがパンクしたりするんとちゃうか?(この危惧は後日現実のものとなりました)

電子申請システムが使えない間、手をこまねいているわけにもいきません。できる範囲で事前準備に着手しました。
公募要領や「事業再構築指針の手引き」(以下、手引き)、「電子申請入力項目」といった参考資料を活用して全体構想をまとめたり、データ収集や下書きを始めました。
とその直後、3月29日に手引きが、4月2日に公募要領がいきなりそれぞれ改訂されました。
以降数日ごとに改定が続き、第1回公募期間中に公募要領のバージョンは「1.0」から「1.4」にまで「進化」することとなったのです。

その間筆者は、後述する様々な不具合や疑問にぶつかりながら、公募要領や手引きを見直したり、コールセンター(事務局と電子申請のサポートセンターに分かれています)に問い合わせたりしてどうにか締切りの数日前、4月27日に申請を完了しました。
ところが後日聞いた話では、締切当日に申請を行った事業者にはログインエラーが続出。
ある事業者は20回以上もやり直した挙句、ようやく申請が受け付けられたとか。
結果として事務局からは
「2021年4月30日9時頃からGビズIDへのアクセスが集中したことにより、サーバー過負荷が発生し、ログインできない状況が発生しておりました」
とのアナウンスがなされ、応募期間が5月7日(金)18:00まで延長されるに至りました。
早めに申請完了しておいて良かった・・・。

類型と要件


本補助金には4つの「枠」が設けられています。
「通常枠」「卒業枠」「グローバルV字回復枠」「緊急事態宣言特別枠」です。そのうち「卒業枠」は400社限定、「グローバルV字回復枠」は100社限定の採択とのことで、一般の中小企業から見れば実質的に通常枠と緊急事態宣言枠がメインの補助金ということができます。
それぞれの「枠」で採択してもらうには、いくつかの要件を満たす必要があります。
例えば「通常枠」の場合、

  1. 事業再構築要件
  2. 売上減少要件
  3. 認定支援機関要件
  4. 付加価値額要件です。
    (個々の要件を詳説することは本稿の目的ではないので、詳しくは公募要領や手引きをご覧ください)

ところで「枠」は公募要領では「事業類型」と呼ばれています。
一方で、「事業再構築類型」というものも存在していて、

  1. 新分野展開
  2. 事業転換
  3. 業種転換
  4. 業態転換
  5. 事業再編の5類型に分類されています。
    「事業類型」と「事業再構築類型」。ややこしい・・・。

事業再構築類型においても、やはり類型ごとに満たすべき要件が異なります(手引き参照)。
申請事業者は、自社が考えている補助金の対象事業が、この要件を満たしているか?満たすためにはどうすれば良いか?を必死になって考えます。
要件の充足が補助金採択の成否を左右する重要なポイントだからです。
ところが、その要件が公募開始3日後に変更されました。
3月29日に手引きが改訂され、業態転換類型の該当要件が「設備撤去等又はデジタル活用要件」から「商品等の新規性要件又は設備撤去等要件」に変更されたのです。
これってアリか・・・?
練ってきた構想の前提が崩れちゃった事業者もいたのでは・・・・?

本補助金では、補助金制度の基幹となる用語が類似しており、それぞれに要件が複雑に設定されており、率直に言って一読しただけで理解することは難しい内容となっています。
しかも朝令暮改的な改訂がなされ、今後もいつ改訂なされるか分からない不安。
(公募要領の表紙には「この公募要領は、必要に応じて改訂されることがありますので、最新のものを事務局のホームページでご確認ください。」との注記が。補助金の公募要領では毎度のことではありますが。)

このように多様に複雑な制度に仕上がっていますが、結局のところ申請される事業類型/事業再構築類型は偏るのでは?と筆者は考えています。
通常枠または緊急事態宣言特別枠の①新分野展開④業態転換に集中するのではないでしょうか?
理由を詳しくは触れませんが、②事業転換③業種転換の要件の一つである「売上構成要件」のハードルが高過ぎるからです。(手引き参照)
「事業」にせよ「事業再構築」にせよ、これほどたくさんの「類型」を作った意図は何なのでしょうか?
より幅広い事業者のニーズ応えたい、ということなのでしょうが、こんなに分かり難くなるのであれば、最初から制度として補助金を分けた方が良いのでは?と、考えてしまうのは筆者だけでしょうか?

(次回に続く)