書評 平成金融危機

書評 平成金融危機

2022年1月30日 オフ 投稿者: Hill Andon

~初代金融再生委員長の回顧~

著者:柳澤 伯夫
出版社 : 日本経済新聞出版
発売日 : 2021年3月22日
単行本 : 367ページ

☆☆ ご興味のある方はどうぞ

柳澤伯夫氏は大蔵官僚あがりの元政治家。初代の金融再生委員会の委員長(後の金融担当大臣)です。
同氏が在任した20世紀の終わりから21世紀初頭にかけては日本の社会や経済が金融危機、不良債権問題に揺れ動いた時期でした。
同氏はその中で大小様々な金融機関の破綻を目の当たりにし、それらいくつかの破綻処理の当事者となり、金融行政を指揮しました。

この時期の日本の経済や政治を扱った書籍はたくさんあるのですが(「平成の経済」「平成の政治」など)、意外に同氏が出てくる件(くだり)が少ない印象です。

確かに不良債権問題を解決した(と言って良いかどうか評価が分かれますが)立役者は「小泉&竹中コンビ」の印象がありますね。
上述の書籍でも両氏の言動や業績の記載は数多く見られます。

一方で、主要行への資本注入や長銀の破たん処理の道筋をつけ、私的整理ガイドラインのとりまとめを促した柳澤氏。
けっこう頑張ってたじゃん。
本書を読んで認識を新たにしたワケですが、その割には「平成金融史」の文脈の中では「冷や飯」を食わされているのは何故なんでしょうか?

ウィキペディアによると小泉政権下の2002年「経済財政担当大臣・竹中平蔵との路線対立から金融担当大臣を更迭される。後任は竹中が兼任。」とあります。
ナルホド。

この「路線対立」が、金融機関に対する公的資金再投入の是非や、のちに公表される「金融再生プログラム」(2004年)に示されることになる政策スタンスに関するものであろうことは想像に難くない(というか周知のこと?)のですが、残念ながら本書はそこに深く踏み込むことなく筆が擱かれています。このあたりは残念。

とは言えバブル崩壊後の1990年代、死屍累々の有様の金融界をどうにか持ちこたえたせた同氏の悪戦苦闘の足跡は、当事者ならではの視点/筆致で描かれており類書とは一線を画しています。

政治家の回顧録にありがちな「都合の悪いトコロは避けて通る」「我田引水自画自賛」的な部分もないではないですが、それでも「勝者側の歴史」では触れられることのない視点は貴重な「史料」です。
(この稿おわり)

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