事業再構築補助金;採択後の落とし穴 ~失敗事例集~

事業再構築補助金;採択後の落とし穴 ~失敗事例集~

2023年2月19日 オフ 投稿者: 鈴木健二郎

苦労して申請した補助金がようやく採択された!やったぜ!!!
でも補助金ってそこからが大変なんです。
本稿では、事業再構築補助金の申請が採択された後、どのような手続きがあり、どんな落とし穴があり、どんな失敗が生じやすいか?といった事柄について解説します。

ユニカイブの「事業再構築補助金~落とし穴~」シリーズ、『事業再構築補助金の落とし穴』『事業再構築補助金 ~概算払いの落とし穴~』に続く第3弾です!!!

そもそも事業再構築補助金とは?

事業再構築補助金は、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済環境の変化に対応するために、中小企業等の新分野展開、業態転換、業種転換等の思い切った「事業再構築」の挑戦を支援する補助金です。(中小企業庁;ミラサポPlusより)

申請するための要件としては、

  • コロナ禍の影響によって売上が減少していること
  • 新分野展開、業態転換、事業・業種転換等、事業再構築指針に示された「事業再構築」の定義に該当する事業を行うこと
  • 認定経営革新等支援機関(国の認定を受けた中小企業診断士、金融機関等)と事業計画を策定すること

等が挙げられます。
様々な「枠」(パターン)がありますが、補助額は最大で1.5億円、補助率は最高で3/4と、従前の中小企業向け補助金制度にくらべると非常に魅力的な制度です。
詳しくは、経済産業省の事業再構築補助金のサイトなどをご覧ください。

採択されてからが大変 ~実際に補助金をもらうまで~

「国は中小企業者の後押しをする立場のはずなのに、これ邪魔してないか?」
苦労して事業計画を立て、計画書に落とし込んで、ようやく採択されたのに、実際に補助金の交付を受けるまでのプロセスで、思わずこんなフレーズを漏らされた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

「ただでも人手不足なのにこんな煩雑な事務処理に対応できる社員なんていないよ」
採択されたのは良いけどやる事が多過ぎて後悔。というケースもしばしば。

とは言え、財源に税金が使われる制度である上、申請者側の不正がたびたび行われてきた経緯もあって、実際に補助金をもらうためには全てのお金の動きに紐づく証拠書類を揃え、補助事業の運営が実際に行われたかなどの詳細を国に報告する必要があります。
補助金が口座に振り込まれるのはお金を使って事業を実施し、それらを国に報告し検査をされ終えた後のことです。

そんな流れを知ってか知らずか、2022年末にも静岡県の事業者が、補助金で賄った経費の一部が「実態を伴っていない」と事業再構築補助金事務局に判断され、補助金の返還と加算金が当該企業に請求されたようです。

個人的な感想としては「捕まらなくて良かったですね」という感じ。
企業名や具体的な内容までは記載されていませんでしたが、そこまで悪質ではなかった、ということでしょうか。それとも捕まるのはこれから・・・?

まあ基本的にはウソやゴマカシが無ければ大丈夫なので皆さんは安心して粛々と手続きを進めましょう。

補助金申請の流れをおさらい

さて、まず補助金申請の流れを振り返りましょう。
事業再構築補助金に関わらず、どの補助金も流れは大体同じです。

  • 公募
  • 電子申請
  • 採択通知
  • 交付申請
  • 補助事業実施
  • 検査
  • 報告書提出
  • 補助金請求
  • 補助金支払い
  • 事業化状況報告


本稿では採択通知が届いた後の「交付申請」以降の概要を、失敗談を中心にお話します。

各段階での「失敗」

交付申請での「失敗」

採択通知が届いたらまずは交付申請をする必要があります。
これは簡単に言うと「申請時にはああ言ってたけど実際の事業ではこうします」という申請です。
基本的には事業計画申請時の内容と変わらないはずなので非常に無駄な事をさせられているように感じますが、より詳細な見積書や相見積を用意し、例えばAという設備を使う予定がそれをBに変えたり、Bという設備が思ったより安く手に入れられそうなのでその分をCに振り分けたり、より具体的に計画し直すのがこのタイミングです。
また、事業自体を取り消せるのもこのタイミングです。

ここでの失敗は、交付申請をして、交付決定通知がなされる前に事業を始めてしまう事です。
基本的には交付決定通知がなされてからが事業実施可能な期間です。
そこからはみ出た経費に関してはいくら採択を受けた内容でも補助の対象になりません(ただし、事業再構築補助金においては「事前着手申請」という制度があり、この承認を得ている場合はその限りではありません)。
また、基本的に「建物費」とか「機械装置・システム構築費」といった同じ費目内での予算移動はできます(変更届が必要な場合あり)が、異なる費目の予算移動は難しいとお考え下さい。

そして、事前着手申請をして採択通知確認後にお金を使い、その後事務局が補助費用を認めず、それを知った銀行が融資を取りやめたというケースがありました。コレ最悪!!
レアなケースかとは思いますが、補助金が採択された後も、「これで安心!」ではなく、資金繰り等に大きなリスクはある事を知っておいて下さい。

補助事業実施段階での「失敗」

補助事業実施期間とは、採択された事業を実施する期間のことです。
事業再構築補助金(第8回)では交付決定から1年以内が事業実施可能期間です。
計画に盛り込まれており、かつ、この期間に支払ったお金が補助金の対象です。

ここでの失敗は、交付決定された額と1円でも違う支払いをしてしまうと対象外にされる可能性があるということです。
たびたび聞く話としては、振込費用の数百円を業者持ちにしてしまい、それで事務局とのやり取りが長期化した、という話です。
また、現金での支払いは認められず、必ず証拠書類(請求書や領収書、通帳等)を残しておく必要があります。
こちらもたびたび「工事代金を現金で支払ってしまった」などが起こりますが、結局やり直して書類を揃える事になるので、事前に注意して進めましょう。

検査での「失敗」

補助金の受給手続きにおける「検査」には「中間検査」や「確定検査」があり、実際に事務局の人間が補助事業を実施した場所にやって来ます。

彼らは常に重箱の隅をつつき回すような事を言ってきますが、単に人の姿をした「補助金ルール」なんだと割り切れば受け入れることができます。
基本的には彼らの言う通りにしていれば問題ありませんし、補助金の振込まで細かく丁寧に導いてくれるある意味天使のような存在です。
ただ、道から外れてしまうと非常に面倒な存在に早変わりします。

これまであった失敗としては、申請したのと違う場所に設備を置いていた(事業実施場所を別に申請している場合は問題ありません)ケースや、大型の設備が何故か建造物と認められ補助対象から外されそうになったケース、代表が交代しており計画自体が否認されたケース(これは創業補助金でのケース)などがあります。

繰り返しになりますが、基本的には事務局に事前確認をし、彼等の言う事を聞いておけば問題は起こらないので、少しでも不安に思った場合はすぐ事務局の担当者に連絡し確認する事をおすすめします。

報告書提出での「失敗」

さて、補助金を請求するフローも最終段階。補助事業の実施状況を報告するプロセスです。
報告書提出では、さまざまな添付資料が必要となりますが、ここら辺になってくると申請から数か月経っているので、冗談ではなく書類が1枚くらい無くなっていてもおかしくない頃です。
最近は紙で書類を管理している会社は少なくなってきましたが、私も一度書類紛失の濡れ衣をかぶせられそうになった事があります。
補助金関係の書類は申請前のものも含め、電子化に加え、きちんとファイリングして保管しておきましょう。
また、新陳代謝の活発な企業であれば、賃上げ表明のハンコをもらった従業員が一人くらいいなくなっていてもおかしくありません。
しかし、ここまで来れば国側は意地でもあなたの会社に補助金を払おうとします。(お役所仕事って面白いですね)
余程の事が無い限り、事務局に相談すれば書類の再整備などでどうにかなります。
民間の感覚では「不合理!」と思うことがあるかもしれませんが、事務局の指示に従い淡々と進めましょう。

事業化状況報告での「失敗」

補助金を請求し、補助金が振り込まれた後、大体の補助金では5年間、国に対して当該補助事業の進捗を報告する作業が必要となります。
補助金で買った設備などは期間中、勝手に処分はできません。
また、補助事業から収益が出た場合、一部のお金を国に納付する義務が生じます。
この収益の計算は少し複雑ですので、採択後に共有される「補助事業の手引き」を確認しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
補助金採択後に待ち受けている様々な落とし穴や「失敗」。あなたの会社ではそれらをどのように回避し、解決されるでしょうか?
あくまで個人的な意見ですが、経理や総務など社内の事務作業も社長がされている規模の会社での補助金申請はあまりおススメしません。こうした落とし穴や「失敗」に立ち向かうリソースが決定的に不足しているからです。

とは言え例えば自社が1000万円の補助を受けられると考えた場合、同じお金を残すのにどれだけの売上を上げなくてはならないか?考えると、申請に前のめりになる気持ちも痛いほど良くわかります。

補助金は欲しい!でもリソースが足りない!!!
そんな場合は、受給手続きの経験の豊富な専門家の手を借りるのが一番です。
どんなに補助金申請の経験豊富な会社があったとしても、通常は1社あたり数件の申請経験が良いところでしょう。
かたやベテランの専門家であれば、十数件/数十件の実務経験を持っていることもまれではありません。
彼らはどこに落とし穴が潜んでいるかも知っていますし、同じ問い合わせでもどう聞けば事務局から有益な回答が引き出せるかも熟知しています。
何よりも自らの「失敗」をココロとカラダに刻み込んでいます。
先人達の「失敗」に学び、全力で事務局と専門家の力を借り、確実安全に補助金をゲットしましょう!!!