徹底分析!事業再構築補助金 事業計画書 ~採択事例の計画書×7を徹底比較~-前編
2021年9月25日先日3回目の公募が締め切られた事業再構築補助金補助金。さる7月19日に第1回公募における採択事例紹介「事業計画書」が公開されました。
本稿では、公開された7つの事業計画書を読み解くことで「採択される事業計画書」とはいかなるものなのか?という疑問に迫りたいと思います。
はじめに
本稿執筆の動機は、過去第1回-第2回公募において事業再構築補助金の申請支援に関わる中で、クライアント様、そして同業のコンサルタントから「事業計画書ってどう書けば良いの?どんな項目を満たせば良いの?」という疑問が寄せられたこと。そしてそれを解決するには、適切なお手本から学ぶのが一番、と考えたことによります。
補助金対象となる事業計画の良し悪しは申請者の構想や個別事情に左右され、採択可能性はその「筋の良し悪し」でかなりの部分が決まってしまいます。これが本質です。
同時に自分たちの構想を的確に表現し、補助金採択の審査員に理解してもらえる申請者の「筆力」もまた重要なファクターです。
筆力が足りないばかりに申請者の思いが上手く伝わらず、取れる採択をみすみす逃してしまうようなことがあってはなりません。
ただ、筆力にも2つあって、構想や情報を的確に表現して伝えるための「質」(本来的な意味での「筆力」)の部分と、審査する側がどのような情報を求めているか?をキチンと把握して、順序良く抜け漏れなく提示する、いわば「形式」と言っても良い部分があります。
本稿で取り扱うのはどちらかというと後者「形式」について。前述した「どう書けば良い?何を満たせば良い?」というそもそもの疑問の多くはこの「形式」の範疇に属するものだからです。
電子申請入力項目
本稿を執筆するにあたりメルクマールとしたのが「電子申請入力項目」というファイルです。以下のアドレスから入手できます。
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/denshi.docx
もともとは事業再構築補助金とは別の「ものづくり補助金」の申請書類(しかも電子申請が始まる以前の)がベースになっていると思われ、書式の冒頭に大きく赤字で「※本書式は、電子申請システムへの入力準備のために記載項目をお示しするものです。本書式に記載して申請するものではありませんので、ご注意ください。」と注記されています。
事業再構築補助金は電子申請システムを通じて申請するわけですが、システムに入力する前にここに示された項目について情報を準備/整理しておいてください。という趣旨の書式です。
実際に補助金申請を行なわれた方は、この「電子申請入力項目」と「電子申請システム操作マニュアル」の2つを首っ引きで活用されたと思いますが、本稿では主に前者に示された項目について、公開された7つの事業計画書がどのように対応しているか?を検証していきたいと思います。
事業計画書と電子申請システム~ややこしい情報の「棲み分け」~
事業再構築補助金の申請書類を作成するにあたってまごつくのが、この電子申請システムにおける「事業計画書」の位置づけとそこに盛り込むべき情報の取り扱いです。
実は事業計画書は、電子申請システムの添付資料という位置づけです。
「電子申請入力項目」 上の「(5)事業計画書」として示されている情報の多くは、電子申請システムにじかに入力することができません。入力する欄自体がありません。「事業計画書」という書式に情報を盛り込んで「別添する」という構成です。
電子申請システムにはそれ以外の様々な情報を入力することが求められています。
とはいえ、それらの情報の「棲み分け」が分かりやすく完全に切り分けられているわけではありません。
情報の一部は事業計画書にも電子申請システムにも入力が求められています。
その際たるものが、事業計画書のキモとも言って良い「収益計画」です。事業計画書にも記載が求められると共に電子申請システムにも重複して入力欄が設けられているのです。
また「本事業で取得する主な資産」として「単価50万円以上の建物、機械装置・システム等」の表は、事業計画書と電子申請システム両方に記載するよう求められていますが、事業に要する経費全体や補助金対象となる金額を示した「経費明細表」は電子申請システム上のみでしか記載を求められていません。
つまり、事業計画書においては事業全体の投資/経費規模の記載は必ずしも求められていない、ということになります。これで良いのだろうか・・・?
作り込みに深入りすればするほど「事業計画書にどこまで書けば良いのか?書かなくていいのか?」について悩むことになってしまいます。
本稿ではこうした疑問への回答として、前述の「電子申請入力項目」に示された項目を「事業計画書記載項目」と「計画書外記載項目」に分けて整理すると共に、手本となる7つの事業計画書がこれらの項目をどのように取り扱っているかについてお示ししたいと考えています。( 「事業計画書記載項目」と「計画書外記載項目」 については、本稿の「後編」で詳しく解説します)
7つの事業計画書
では、まず手始めに7つの事業計画書についてのサマリーをご紹介します。
申請事業者がどんな内容でいくらの補助金を申請し採択されたのか?を各事業計画書記載の内容からまとめたものです。
これらのサマリーについては、筆者が個々の事業計画書に基づいて作成したもので、コメント欄をはじめとするその内容の責任は筆者に帰属するものであり、事業再構築補助金の事務局や実際に事業計画書を作成された方々の意図とは無関係であることをあらかじめご承知おきください。
事業計画書では全ての情報を網羅することは求められていない!?
サマリーにも「不明」の箇所が散見されるように、実は事業計画書を読んだだけでは必ずしも「だれが、どんな内容で、いくら補助金を得た事例か?」が把握できるとは限りません。サマリーでは触れていませんが、なかには「商号」や「法人名」が明記されていない事業計画書もありました。(それアリですか!?って思いますよね)
とはいえ、これらは採択事例の中から選ばれた模範的な7つの事業計画書です。不備を指摘される筋合いはないはず。コメント欄でも触れていますが、どの計画書も 「電子申請入力項目」に示された 「事業計画書記載項目」に関してはキチンとカバーしています。
にもかかわらず、事業計画書を読んだだけでは事業計画の全貌が把握しきれない!?
つまり「事業計画書では全ての情報を網羅することは求められていない」ということです。
申請/採択に必要な情報は電子申請システム全体で網羅されていればよく、事業計画書だけでは不明な情報があっても構わない。少なくともそれをもって不採択にはつながらない。ということはできると思います。(とはいえ、全体を把握し難い事業計画書でいいのか?という指摘は当然にあり得ます。これについては改めて触れます)
その一方で、前述した「収益計画」のように事業計画書と電子申請システム(じか入力)の両方に重複して記載することが求められている項目もあり、「要するに事業計画書には何を書けばいいんだ!?」という疑問は依然晴れません。
次回は、「電子申請入力項目」に示された項目ごとに、それらが7つの事業計画書でどう取り扱われているか?を検証していきます。
お楽しみに。
(次回に続く)
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こんにちはHill Andonです。日本語で書くと昼行燈と申します。
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